舌下免疫療法、事始め。
いつ頃からだったか、正確には思い出せない。
中3くらいだったか、あるいは高校生にはなっていただろうか。
花粉症とは、その頃からの付き合い。
今でも思い出す。
花粉症が発症した初年が、いちばん大変だった。
特に目の痒み。その症状に対して、僕はひたすら眼を擦り、掻き続けた。
その結果、瞼の裏の皮膚(粘膜?)の様なものが、てろんと剥がれた。ぞぞぞっと、気持ちが悪かった。
それもあって、翌年以降は目だけは擦らずににやり過ごすようになった。
しかし、鼻の方はノーガードだった。当時の僕には、マスクをする、という習慣がなかったのだ。
おかげで、鼻水はだらだら、ティッシュで擦るために鼻の下は赤くなった。
今の僕からしたら、何でマスクをしなかったのか、と。不思議。
花粉症とは、長い付き合いだ。別れられるものなら早く別れたいのだけれど。
きっと死ぬまでのお付き合いになるのかと諦めている。
しかし、花粉症との関係を清算するための、光明が見え始めた。
舌下免疫療法だ。
僕の職場には、春になるとダースベイダーのような出で立ちになる男がいた。
マスクとゴーグルで厳重に顔を覆うのだ。ダースベイダーのというよりも、白系だったためストームトルーパーと言った方がいいかもしれない。
僕なんかよりも重度の花粉症で、春の風物詩の一つ。
彼が白いマススが、職場に春の訪れを教えてくれる。
そんな、春の風物詩に、あるとき変化が訪れた。
職場のストームとルーパーがそのマスクを脱いだのだ。
大丈夫か。大丈夫なのかっ!?
我々花粉症患者にとって、春にマスクを取ることは、汚染された空気の中に生身で身を投じるようなもの。
腐海の瘴気の中でナウシカがマスクを取るようなもの。「少し肺に入った…」って、なっちゃうよ。
僕は元ストームトルーパーに尋ねた。
正気なのか!?と。
彼はニヤリとして答えた。
「舌下免疫療法」
おお!あれか!
花粉症に対しての免疫療法があるのは知っていた。
知ってはいたが、以前は定期的に注射をする減感作療法だった。
定期定期な注射と、それ相応の費用。二の足を踏むのは言うまでも無く。
しかし、いつのころからが、「舌下免疫療法」と言うのが出てきた。
僕はその存在もネットで見聞きはしていたものの、通院までして治療を受ける動機にまでは至らなかった。
だって、なんとなく効かなそうだったから。
しかし、元ストームトルーパーの彼が言うには、「めっちゃ効く!」と。
是非やるべきだ、とさえ言われた。
舌下免疫療法は3?5年掛かると言われているが、彼の場合は1年目で明らかなる効果が見られたらしい。
それを聞いたのは、今年、2019年の春まっさかり。
この春を乗り切ったら、耳鼻科に行ってみようと心に決めた。
春が終わり、数ヶ月も経ってしまった9月某日。
行きつけの耳鼻科を訪れた。
僕が花粉症の時期とは全くズレた時期に言ったものだから、「今日はどうしたの?」から始まる。
「舌下免疫療法をやってみようかな、と思って」と、僕は答えた。
苦笑い、とでも言うのだろうか、やや微妙な笑い方をしながら先生は言った。
「ネットとかで調べてみた?」
「まあ、ある程度は」と、僕。
その後、時間が掛かること(3年?5年)、効果が必ずしも出るとは限らないこと。
そう言ったことを説明された。
どうやら、舌下免疫療法が期待通りにならない可能性を、ちゃんと説明したかったらしかった。
それでも僕は「やります」と答えた。
春が少しでも楽に過ごせる可能性があるなら、そっちを選びたい。
まず、この日はまず血液検査。
その検査結果を元に、次回の来院で投薬を始めるか決める、とのこと。
次回の来院において、二つの事を念頭に置いて来るように、と言われた。
?次回は時間にゆとりを持ってくること。
理由は、薬の処方箋を書いて貰った後すぐに薬局へ行き、薬を処方して貰う。
そのまま再び病院に戻ってきてから、先生の前で最初の投薬。
その後30分間、病院内で待機する。
仮にアナフィラキシーショックなどの反応があった場合、すぐに対処するため。
?次回の来院の一週間後に、必ず来院すること。
つまり、二週連続で通院できる日を選んでくること。
一週間の反応を看るため、なのだろうと思う。
と言うわけで、花粉症寛解へ一縷の望みを掛け、舌下免疫療法を始めることにした。